2020年12月15日

マーケティングのコストについて(再々)

note版を2020年8月14日に加筆修正したものを更に加筆)

 マーケティング経費についても、よく相談される案件です。事業会社さんからも、代理店、ツールなどの会社さんからもです。その際に考えなくてはいけないのは、

・該当の会社、業界でマーケティングは何を意味しているのか。

・マーケティング経費とは何が入っているのか。

・事業会社の業態、業種はなにか?

・成長のどのステージか?

などです。一概には答えられないということです。

 ほんの10年ちょっと前くらいまでは、日本にはマーケティングは存在しない、小売業にはマーケティングは必要ないなどいう方もたくさんいたせいか、いまだにマーケティングに関する考えが浸透していない、社内での共通認識がないという会社が多いようです。1社しか所属したことしかない方にはわからないと思いますが、同じ業態、業種でも会社により、マーケティングの定義も違いますし、部署名、役割も大きく違います。(同じ業界内でも会社が違えば、社内用語は冗談のように違います。)

 マーケティングは元々P&Gなどの大手の消費財メーカーの活動を整理して体系化された部分が多いので、消費者向けの物販的な色合いが強いと言えます。古典の教科書的には、マーケティングは商品開発から始まるプロダクトマーケティングとマーケティングコミュニケーションに分かれます。違う見方では、B2BマーケティングがB2Cマーケティングというわけ方もあります。

 物販系だと、メーカーは製造から行いますので、B2Bマーケティングのみが必要となる下請けを別にすると、プロダクトマーケティングとマーケティングコミュニケーションの両方が必要です。もしくは、マーケティングコミュニケーションもプロダクトマーケティングの一部として考えられています。

 小売事業者は、基本的に仕入れをして販売ということで、プロダクトマーケティングの部分はざっくりと仕入れ費用に含まれます。ですので、マーケティング費用というと基本、広告宣伝、販促費ということになります。

 極端な言い方をすると、メーカーは、プロダクトマーケティングとマーケティングコミュニケーションという2つのマーケティング費用のポケットがあり、ある程度潤沢なマーケティング活動が可能です。しかしながら、マーケティングは存在しないと言われていた日本の小売業は、広告宣伝・販促費のみがマーケティング費用の源泉です。追加として商品提供元から提供を受けるサポート費用もありますが、基本利用対象が制限される紐付きの予算です。そして、以前からの国内の小売の広告宣伝費の売上に占める割合は2.3-2.5%と言われていて、今もあまり変わっていないようです。ブランディング・商品開発に使えるマーケティング費用を持つメーカーと違って、小売は「直接的な販売のための」マーケティング費用しか持っていないということです。

 この辺の理屈を理解していないベンダーさんが、メーカーでの事例をもとに小売企業に提案しに来て、討ち死にして帰っていくことが多々あります。また、利益率の高い商品カテゴリーの会社での事例を利用する場合も同じようなことが起きています。(この辺のアドバイスも当社の案件にはよくあります。)

 小売企業もECやWebの活動を始めてかなり期間が経ちましたが、いまだに経理や経営企画部門とマーケティング費用に関して衝突することも多いということです。なぜなら、ECに関するWeb広告経由の売上に関するコストはよくて5-10%(ROASの1000-2000%)だからです。ECの全部の売上をWeb広告経由で獲得するわけではないとはいえ、店舗販売よりもはるかに高い比率です。立ち上げ初期の場合、一時的なてこ入れの場合は、さらに大きな比率にもなります。EC、Webはやらなくてはと思いつつも、売上を依存する割合が増えてくると、全体のコスト構造を再設定せざるを得なくなるため受け入れに抵抗があるのです。

 私は、ピンポイント的にはEC事業と費用の適正な考え方、そして、全社の中でのマーケティング活動と費用といったことから関わることが多く、さらに成長ステージごとに既存事業の中でのWeb広告やデジタルに関するアドバイス、適正なコスト比率を決めていくお手伝いなどもしています。マーケティング費用はやみくもに多ければいいというものではないけれど、マーケティングやその費用の意味合いをマネジメントにわかってもらえなければ、適正な予算の獲得も成長もできません。その実現のために、自身の経験から戦略策定を通じて、社内の理解を深めていくのも私の重要なミッションだと考えています。B2B、B2Cを含む所属していた大小の会社でマーケティング〇〇という肩書を5度持っていたこともあり、ご相談の際は、具体的なマーケティング戦略、経費のアドバイスに加えて、経営層への説明などに、うまく使っていただいています。

【ここから加筆=上記のカジュアルなサマリー】

 通常の小売の広告宣伝費は売上の2.3-2.5%。かたや、Web広告は、この%では無理で、巡行状態になっうえでもWeb広告経由売上の10%くらいです。ECでは、EC売上全体に占める広告宣伝費は2.5%よりは高くなるが、Web広告の比率にもよるが10%よりは遥かに小さくなります。

 ここまでは、旧来の小売とECとの対比的なお話です。しかし、現在は、オムニチャネル、シームレス、ニューリテイルなど、旧来の実店舗ビジネスとECなどのオンラインビジネスを分けて考える段階ではなくなっています。よりマーケティングの考え、そのコスト比率が複雑になってきています。

 この状況も踏まえ、新規のことをやるとき、マーケティング費用は想定できないことが多いといえます。なので、立ち上げ時は、あえて、全体でもX%くらいかかるのが業界の常識です、と言いきって無理やりでも通すことをときにはおすすめしています。結局、ある程度やらないとわからないので、いつまでも決められず、行動ができな会社が非常に多いのです。その場合、結局、誰もハッピーにはなれないのです。

 もちろん、マーケティングコストという塊でなく、目的、対象、戦略ベースで項目を分け、それぞれの費用、効果をブレークダウンしていくのは当然のことです。

 このサイトを訪問された方、コラムをお読みの方は、適正なマーケティングコスト知りたかったり、他社に比べて自社の宣伝広告費が許容範囲なのかなどをお知りになりたいはず、もしくは、新規にECなどを始める際に、会社、上司を説得する材料が欲しくて来られているのではと思います。その推定値の取得と社内の説得の根拠は、他社事例くらいしかないのですが、新しいビジネスには他社事例もないのが普通です。その推定のためには、複数の会社のマーケティング、オンライン/オフラインを、それも立ち上げから成長フェーズまで経験している人間と検討していくしかないかもしれません。

 まずは、ご相談ください。私が経験上でわかるX%はお伝えできますし、そうでなければ、経験とヒアリングから最適値を決めていきましょう。